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AIに切られるのは”測る人”? ドラッカー説とレイオフの実態を調べてみた

AIに切られるのは”測る人”? ドラッカー説とレイオフの実態を調べてみた

先日、思わず最後まで見てしまった動画があります。テーマはこうでした——「優秀なAI企業ほど、社内の”測る人”を切っている」。

経済学者ドラッカーは、企業の人を「作る人・売る人・測る人」に分けた。会社にとって作る人と売る人は不可欠だが、測る人(集計したり管理したりする人)はそこまで重要じゃない——。そして今、最先端の企業はAIに”測る人”の仕事をやらせ、浮いたお金を作る人と売る人に投資して、売上を伸ばしている。そういう話でした。

正直、すごく腑に落ちる話で「なるほど!」と思いました。でも、僕は過去にAIの嘘(ハルシネーション)で痛い目を見て以来、面白い話ほど一回立ち止まって裏を取ることにしています。なのでこの説、自分なりに調べてみました。結論から言うと——半分は本当で、半分は盛られていました。

検証①:そもそもドラッカーは「測る人」と言ったのか?

まずここから引っかかりました。「作る人・売る人・測る人」という3分類、本当にドラッカーの言葉なのか?

調べた範囲では、これがドラッカーの理論だという確かな裏付けは見つかりませんでした。ドラッカーで有名なのは「顧客の創造」「われわれの顧客は誰か」といった概念で、「作る人・売る人・測る人」という3点セットでドラッカー本人が語った、という一次資料にはたどり着けなかった。

「会社の本質は”作る人”と”売る人”の2つに集約できる」という議論自体は存在します。ただそれは個人ブロガーの整理だったりして、ドラッカーの名前とは結びついていない。つまり「測る人」を足した3分類は、誰かがキャッチーに作り変えた”俗流バージョン”の可能性が高いというのが、今の僕の結論です。

※もし「これがドラッカーの○○という著書に書いてある」という出典をご存じの方がいたら、ぜひ教えてください。僕が見つけられなかっただけかもしれないので。

……と、いきなり出鼻をくじくようですが。大事なのはここからです。「ドラッカーが言ったかどうか」は怪しくても、“測る人が今まさに削られている”という現象そのものは、データで裏が取れました。

検証②:「測る人」は本当に切られているのか?→ これは本当だった

2026年のテック業界のレイオフ(人員削減)を見ると、削られている職種にはっきり傾向があります。

削られている側(≒測る人)奪い合いの側(≒作る人)
中間管理職機械学習エンジニア
品質保証(QA)AI安全研究者
カスタマーサポートデータインフラ専門家
コンテンツモデレーション(56%もの賃金プレミアムがつく職種も)

カスタマーサポート、品質保証、コンテンツモデレーション、そして中間管理職——こうした役割が消えていく一方で、機械学習エンジニアやAI安全研究者、データ基盤の専門家は逆に人手不足。アメリカでは記録的な人員削減と同時に、27万5,000件ものAI関連求人が埋まらず空いていた、というデータもあります。

特に中間管理職。「2026年末までに、5社に1社が中間管理職の半分以上を削る見込み」という予測まで出ています。なぜか。中間管理職は歴史的に「情報の伝達役」でした。経営陣の指示を現場向けの作業に分解し、現場から効率や業績のデータを集めて上に報告する。……これ、まさに「測る人」の仕事ですよね。そしてこの集計・報告という機能こそ、AIと業務ソフトが最も得意とするところ。Twitter創業者のジャック・ドーシーらも「AIは中間管理職を不要にできる」と公言しています。

つまり「測る人が削られている」という動画の核は、事実として裏が取れたわけです。ここは動画が正しい。

検証③:「だから売上が伸びた」は本当か?→ ここが盛られている

問題はこの先です。動画の「測る人を切った→その分を投資に回した→売上が伸びた」という因果。ここが一番あやしい。

専門家はかなり冷静です。ウォートンの経営学教授は、企業のレイオフ発表についてこう斬っています。「”AIがこの仕事をカバーする”と言って解雇を発表しているが、実際にはまだやっていない。ただ期待しているだけだ」と。オックスフォード・エコノミクスも2026年初頭に「企業が大規模にAIで労働者を置き換えている形跡はない」と結論づけ、AIがコスト削減の”隠れ蓑”に使われている可能性を指摘しています。

決定的なのは、OpenAIのサム・アルトマン本人の発言。「本来やるはずだった解雇を”AIのせい”にする”AIウォッシング”がある」と認めているんです(同時に、本物の置き換えも起きていて、外から両者を見分けるのは難しい、とも)。

そして数字の話。Q1だけでテック業界のレイオフは約8万人。そのうち「AIが原因」とされる割合は——調査元によって20.4%だったり47.9%だったりバラバラ。同じ時期の話なのに、2倍以上の開きがある。なぜか。「四半期が進むにつれて、企業がAIを理由に挙げる”言い方”を強めたから」だと分析されています。つまり原因が変わったんじゃなくて、“AIのせいにする語り方”が流行っただけかもしれない、と。

もっと言えば、利益が出ている会社まで人を切っています。GoogleやAmazonなど大手4社は2026年にAIインフラへ7,000億ドル超を投じる計画。人件費は「素早く削れる数少ないコスト」だから、“測る人が無駄だから切った”というより、”AI投資の原資を作るために人を切った”のが実態に近い。コロナ期に採りすぎた人員の調整(右サイジング)も、まだ続いています。

まとめると、こうです。

  • 測る人が削られている → 本当(データで裏付けあり)
  • ⚠️ ドラッカーが3分類を言った → 裏が取れず(俗流アレンジの疑い)
  • 切ったから売上が伸びた → 単純化しすぎ(AI投資の原資作り・コスト削減の隠れ蓑という側面が大きい)

で、あなたの仕事は「作る人」か「測る人」か

ここからが、この記事で一番伝えたいところです。理屈の真偽はさておき、「測る人的な仕事ほどAIに置き換わりやすい」という方向性は、間違いなく本当だからです。

ざっくり言えば、こういう仕事は要注意。

  • 数字やデータを集めて、まとめて、報告する仕事
  • 決まったルールに沿って、間に立って情報を右から左へ流す仕事
  • 「チェックする」「管理する」が中心で、自分では新しいものを生み出していない仕事

逆に強いのは、何かを生み出す人(作る人)と、人を動かして売る・つなぐ人(売る人)。AIは集計や要約は得意でも、ゼロから価値を作ったり、人の感情を動かして契約をまとめたりは、まだ人間に分があります。

じゃあ「測る人」側の仕事をしている人はどうすればいいのか。僕が思うのは、“測る人をやめる”んじゃなくて、”測る作業をAIにやらせて、自分は作る・売る側に半歩ずらす”こと。報告書を作るのが仕事なら、報告書はAIに下書きさせて、自分は「その数字から何をすべきか提案する」側に回る。データを集めるのが仕事なら、集計はAIに任せて、自分は「集めたデータで人を説得する」側に回る。

実際、いま伸びている職種は「AIを使いこなして、その上に判断や設計を乗せられる人」です。”純粋な作業”だけのポジションが減って、”専門知識+AIツール”の組み合わせ型が増えている。要は、AIに仕事を奪われるんじゃなくて、AIを部下にして自分が一段上がるイメージです。

最後に:面白い話ほど、裏を取ろう

今回いちばん伝えたかったのは、実は「測る人」の話そのものより、こっちかもしれません。

「ドラッカーが言った、AIで測る人を切ったら売上が伸びた」——この一文、すごくよくできています。権威(ドラッカー)+ 旬のキーワード(AI)+ 分かりやすい因果(切ったら伸びた)。SNSや動画でバズる要素が全部入り。でも一個ずつ調べると、権威の部分は怪しく、因果の部分は盛られていた。核だけが本物だった。

これ、AIに限らずなんでもそうですよね。よくできた話ほど、どこかが滑らかすぎる。僕はGeminiの嘘で恥をかいて以来これが癖になったんですが、「面白い」と思った瞬間に、一回だけ”本当か?”と立ち止まる。それだけで、受け売りで恥をかく確率がぐっと下がります。

……と偉そうに書きましたが、この記事だって僕が調べた範囲の話。鵜呑みにせず、気になったらぜひご自身でも裏を取ってみてください。それがいちばん、この記事の趣旨に合っていると思うので。

まとめ

  • 「AI企業が”測る人”を切っている」→ 中間管理職・QA・サポートの削減は事実
  • ただし「ドラッカーが3分類を提唱」は裏が取れず、「切ったから売上が伸びた」は単純化しすぎ
  • レイオフのAI起因率は調査で20〜48%とバラバラ。”AIのせい”という語りが流行っている面もある
  • 方向性として「測る系の仕事」はAIに置き換わりやすい。”作る・売る”に半歩ずらすのが防御策
  • AIに奪われるのではなく、AIを部下にして一段上がる発想を
  • そして何より——面白い話ほど、一回立ち止まって裏を取る

気になる話を鵜呑みにせず、自分で確かめる。地味だけど、これがAI時代をしぶとく生き抜く一番の武器なんじゃないかと思っています。