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「Obsidianで第2の脳」は本当に必要?AIの記憶対策を実際に試して検証してみた

「Obsidianで第2の脳」は本当に必要?AIの記憶対策を実際に試して検証してみた

「Obsidianで第2の脳」説、本当に必要なのか検証してみた

YouTubeやSNSで「AIエージェントの記憶はObsidianで管理しろ」「これで生産性が100倍になる」という話をよく見かけます。AIに毎回同じ説明をする手間が消えて、過去のやり取りが消えなくなる——というふれこみです。

確かに「新しいチャットを開くたびにAIが前回のことを全部忘れている」のは、AIを使う人なら誰もがぶつかる悩みです。筆者もずっとこれに困っていました。なので、流行りのObsidianを実際に導入して、最後まで触ってみました。

結論を先に言うと、「人によっては要る、でも多くの人がやりたいことには、正直エクスプローラーで足りる」でした。この記事では、なぜそうなったのかを、実際の作業の流れと一緒に検証していきます。

そもそも、何が問題だったのか

AIチャットを使っていてストレスになるのは、記憶が毎回リセットされることです。昨日あれだけ細かく説明したのに、新しい会話を開くと、AIはこちらが何者かも、何のプロジェクトを進めているかも覚えていません。毎回ゼロから前提を説明し直すことになります。

解決の方向性自体はシンプルです。AIは会話の中身を覚えていられないので、記憶を会話の外(パソコンの中のファイル)に逃がしておく。そうすれば、新しい会話のときにそのファイルを渡せば、前提が一発で伝わります。チャットが切れても、別のAIに乗り換えても、同じファイルを読ませれば続きから始められる、という理屈です。

「Obsidianで第2の脳」というのは、この”記憶を外に逃がすファイル置き場”としてObsidianを使おう、という提案です。ここまでは筋が通っています。問題は、その置き場が本当にObsidianである必要があるのか、という点です。

Obsidianとは、要するに何なのか

実際に触ってまず分かったのは、Obsidianの正体です。Obsidianは、ひとことで言うと「テキストファイルを見やすく表示する、ローカルのメモアプリ」です。

仕組みはこうなっています。

  • 「ボルト(保管庫)」と呼ばれるフォルダを1つ指定する。これはパソコンの中のただのフォルダ。
  • その中に作る「ノート」の正体は、拡張子が .md(マークダウン)のテキストファイル。
  • Obsidianは、そのフォルダの中身を一覧表示して、テキストをきれいに見せているだけ。

つまり、特別なデータベースに保存されているわけではありません。手元のフォルダに、ただのテキストファイルが並んでいるだけです。Obsidianは、その並んだファイルを「見やすく表示する窓」を提供しているにすぎません。

この時点で、勘の良い人は気づくと思います。「フォルダにテキストファイルを置いて、一覧で見たいだけなら、それWindowsのエクスプローラーで普通にできるのでは?」と。まさにそこが、この記事の検証ポイントです。

実際にやってみた工程

正直に書きます。導入は、初めての人にはそこそこ手こずります。

アプリを入れて、ボルト(フォルダ)を作って、メモを書くファイルを作る。ここまではいいのですが、フォルダを作るボタンとノートを作るボタンのアイコンが似ていて、何度も取り違えました。気づいたら意図しないフォルダがいくつもできていたり、見たいフォルダに切り替えられず別の機能を開いてしまったり。「保管庫を切り替える」ボタンがどこにあるかも直感的ではなく、慣れるまでは迷子になりがちです。

苦労して環境を整えたあとで、ふと我に返りました。「自分が今やっているのは、フォルダにテキストファイルを置いている、それだけだ」と。リンクで繋いだり、タグで整理したり、Obsidian自慢の機能は一つも使っていない。ただファイルを溜めて、必要なときに開いて中身をコピーする。それだけのために、慣れないアプリのUIと格闘していたのです。

「記憶をコピペで使い回す」だけなら、エクスプローラーで足りる

多くの人がAIの記憶対策としてやりたいことを、突き詰めると、こうなります。

  1. 過去のやり取りを、消えないようにファイルとして溜めておく。
  2. 必要なときに、そのファイルを探して開く。
  3. 中身をコピーして、新しいチャットに貼り付けて、続きから始める。

この3つは、すべてWindows標準のエクスプローラーとメモ帳でできます。専用フォルダを1つ作って、日付とタイトルを付けたテキストファイルを放り込んでいく。探すときはフォルダ内を検索する。開くときはダブルクリック。中身をコピーして新しいチャットに貼る。Obsidianのアプリを起動する場面が、どこにもありません。

「ローカルのフォルダにマークダウンを置いて管理する」という構造自体は、Obsidianの提案そのままです。ただ、その構造を作るのにObsidianというアプリは必須ではない、というだけの話でした。

みんなが「最強の記憶媒体」と言うけれど、チャットの記憶を溜めてコピペで使い回すだけなら、マークダウンファイルをエクスプローラーで管理すれば済む話だった。

では、Obsidianが「要る人」とは

とはいえ、Obsidianを絶賛している人たちが全員間違っている、という話ではありません。検証してみて分かったのは、目的が違えば結論も変わるということです。

Obsidianが本領を発揮するのは、ファイルを「溜める」だけでなく「育てる・繋ぐ」使い方をするときです。たくさんのメモを書き溜めて、ノート同士をリンクで結び、後から「この話とあの話は関係していたな」と辿る。タグで分類して横断的に探す。全体のつながりをグラフで眺める。こうした”知識を編んでいく”使い方をするなら、エクスプローラーでは到底届かない価値があります。

逆に言うと、騒がれているのはこの「育てる・繋ぐ」機能の部分です。それを使い倒している人にとっては、確かに手放せないツールなのでしょう。ただ、今回のように「AIに渡すログを溜めてコピペする」だけの用途では、その機能を一切使いません。だから物足りなく感じて当然なのです。

検証のまとめ

「Obsidianで第2の脳、生産性100倍」という説を、実際に試して検証した結果はこうなりました。

  • ⚠️ 「AIに記憶を持たせる」発想自体は正しい。記憶を会話の外のファイルに逃がす、という考え方は理にかなっている。
  • 「そのためにObsidianが必須」は盛られている。ログを溜めてコピペする目的なら、エクスプローラーとメモ帳で足りる。
  • 「ノートを繋いで知識を育てたい人」には本当に価値がある。この使い方をするなら、Obsidianは強力。

「100倍賢くなる」という煽りに乗る前に、自分がやりたいのは「ファイルを溜めてコピペすること」なのか、「知識を編んで育てること」なのかを、一度はっきりさせるのがおすすめです。前者なら、新しいアプリを覚える必要はありません。後者なら、Obsidianを学ぶ価値は十分にあります。

道具は、流行っているかどうかではなく、自分の目的に合っているかで選ぶ。当たり前ですが、実際に手を動かしてみないと、その当たり前に気づけませんでした。今回はその意味で、試した価値のある検証でした。